髙橋ピョン太の日記

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擦り切れるほど読んだ攻略本『ドルアーガの塔のすべてがわかる本』

   

『ドルアーガの塔のすべてがわかる本』は、言わずと知れたナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)の名作アクションRPG『ドルアーガの塔』のファミコン版に向けて書かれた攻略本です。ゲームは1985年8月6日に発売、攻略本は次の月の9月5日に発売になりました。

攻略本の発行元は株式会社アスキー(現:KADOKAWA)ログイン編集部で、『ログイン』というパソコンゲーム雑誌内の「ファミコン通信」というコーナーのメンバーが編集した攻略本です。この「ファミコン通信」というコーナーがのちに独立して、現在も発刊し続けているゲーム雑誌「週刊ファミ通」へと続いているんですが、この攻略本の登場はそんな「ファミ通」が創刊される前年のお話です。

△ファミコンカセットと攻略本

攻略される側のゲーム『ドルアーガの塔』は、ファミコン版以前にアーケードゲームとして1984年に世に出て、いろんな意味でゲーム史に一石を投じる作品となり(後述します)、それはもう話題のゲームでした。ゲームファンは、『ドルアーガの塔』がファミコン版で出ると聞き、発売前から期待感でいっぱいでした。

RPGの先駆けゲームは、攻略本必須だった

さて、攻略本について詳しくお話をする前に、元々のアーケードゲームとして登場した『ドルアーガの塔』についても少し解説させていただきます。

△Nintendo Switch版のタイトル画面
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.
△Nintendo Switch版ゲーム画面
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

『ドルアーガの塔』がゲームセンターに登場したのは、1984年。ゲーム史でいう時代背景は、1983年に『ゼビウス』が登場し、瞬く間に大ヒットとなり、ゲームと同じくかの伝説の同人誌『ゼビウス1000万点への解放』もゼビウスファンの間で大きな話題となった、そんな年の翌年です。なぜ『ゼビウス』の話をしたかというと、実は『ドルアーガの塔』は、『ゼビウス』のゲームデザイナーである遠藤雅伸氏の次回作として、登場前からすでに世に知れ渡っていた待望の作品だったからです。

そして『ドルアーガの塔』は、アーケードゲームなのにRPGでもあるという触れ込みでした。今でこそRPGというゲームジャンルは誰もが知るカテゴリーですが、当時の日本は、『Wizardry』や『Ultima』の世界的なヒットもあり(1981年頃のお話)、その影響から「RPGはすごい、RPGは徹夜必至的な剣と魔法の世界である」ということはもちろん知っていて、だけど頭で知っていても、実は体験している人はそれほど多くなかったという背景がありました。

『ドラゴンクエスト』が登場するのは、『ドルアーガの塔』が登場した2年後の1986年。

当時、多くの日本のゲーマーにとって、初めてのRPG体験は1984年にパソコンゲームとして登場したBPSの『ザ・ブラックオニキス』というような時代でした。

『ザ・ブラックオニキス』ですら『ドルアーガの塔』の登場と同じ年のお話なのです。いかにアーケードゲーム『ドルアーガの塔』がRPGの先駆けであったことがわかります。

当時はAPPLE IIを持っているような先進的なゲーマーや『ダンジョンズ&ドラゴンズ』プレイヤー以外は、実はRPGに対しては耳年増だったんです。だからもう、RPGと聞いただけで妄想が膨らみ、かつもうプレイしたくてたまらん、そんなゲーマーがたくさんいました。

RPGをアーケードゲームへと昇華させた作品

そんな時代に登場した『ドルアーガの塔』は、RPGをうまくアーケード化し、これまた見事に剣と魔法の世界を具現化した、素晴らしいゲームデザインで、瞬く間に評判となりました。謎だらけの『ドルアーガの塔』は、面白くて仕方がなく、自分もすぐにハマってしまいましたね。

よく「『ドルアーガの塔』は不条理で、そんな謎、解けるわけない」と発言をするゲーマーがいますが、そうではないんです。これは遠藤雅伸氏からの挑戦状を、我々ゲーマーが受けて立った瞬間だったのです。謎かなければいけなかったんです…。なぜならばシューティングゲームであるはずの『ゼビウス』に謎めいた仕掛けをふんだんに仕込んだ、あの遠藤氏の次回作であるこのゲームに、当然ながらいろいろな謎が仕掛けられているに違いないと、一種の願望のようなものがそうさせたのです。

当時のゲームセンターで『ドルアーガの塔』をプレイしていた人々は、もちろん心の中で「そんなのわかるわけない」って思っていました。1プレイ100円で必至に謎を解こうとしていました。

しかし、個人のレベルでは限界もあり、ひとりですべてを解こうなんて、さらさらそんな気ありませんでした。では、当時は、みんなどうしていたのかというと、まずは他人のプレイもしっかりと観察をすることから始まりました。

『ドルアーガの塔』をプレイしているうまい人の周りにはギャラリーがつき、皆そこからワザを盗んでいました。気がつけばゲーセンにはノートが置かれ、そこにみんなで攻略情報を書き込んだりするなど、いわゆる口コミというやつで、どこの誰だか知らない人たちと『ドルアーガの塔』の攻略で盛り上がったりしていました。

というわけで、いつの間にか『ドルアーガの塔』の各階の謎の解き方が少しずつゲーマーに浸透するようになり、やがてはそこかしこに塔の全貌を把握するプレイヤーも出現するという流れができあがりました。

しかしながら『ドルアーガの塔』が面白く、かつアーケードゲームとして成立するのは、謎解きがわかったからといって、誰もが簡単に解けるゲームではなかったという点なんですね。

ゲームをプレイするたびに自動生成されるダンジョンは、毎回、鍵と脱出扉の位置、敵の出現する場所が変わるので、そこにアクション性も生まれます。解けるときもあれば解けないときもあり、そうこうしているうちにその階の謎解きってどうやるんだっけ?と混乱する時もありました。『ドルアーガの塔』すべてを攻略するのは、本当に難しかったんです。

そんな『ドルアーガの塔』がファミコン版で出るぞと聞いて、これを喜ばないゲーマーがいるわけがありません。

そして『ドルアーガの塔』に限って言えば、その不条理な謎こそが、ゲームをプレイしたいという最大のモチベーションにつながっていたという、とても希有なゲームだったのです。遠藤雅伸氏からの挑戦、RPGへの妄想が、そんなまれなケースを許してくれた、なんとも不思議なゲームでした。あとにも先にもそんなゲームは見たことありません(自分史上)。

そんなこともあり、ファミコン版『ドルアーガの塔』をじっくりと家でプレイをするのは、言うなればゲーム登場時からの夢であり、かつ傍らに攻略本を置いてプレイできるなんて、もう夢のまた夢でした。

△荒井清和氏の描く似顔絵が秀逸。左から水野店長、ゲヱセン上野氏、東府屋ファミ坊氏

『ドルアーガの塔のすべてがわかる本』は、必携ですよ。しかもこの本は、東府屋ファミ坊氏、ゲヱセン上野氏、水野店長と、その後ファミ通の初期メンバーとして大活躍する方々が監修し、かつのちに『ポケモン』を作ったゲームフリークの田尻智氏も協力しているという、豪華メンバーで作られた攻略本でした。

当時はホント、これをボロボロになるほど読みながら、家で『ドルアーガの塔』をプレイしていましたね~。

△1フロアずつ丁寧に紹介される解説に感謝した日々

実はすごい功績を残した攻略本

それともうひとつ『ドルアーガの塔のすべてがわかる本』の出現は、その後の新作ゲームと攻略本という対の関係を築くきっかけになったと思っています。

もちろんそれ以前に『ゼビウス1000万点への解法』や『ゲームフリーク』『TAMPA』といった有名な同人誌等はあり、攻略本という概念も完成しつつありましたが、出版の流通にのって、全国の本屋さんでちゃんと売られるようになって、しかもヒットした攻略本は、まだ世間には定着していない時期でした。

1985年に出版された総合ベストセラーランキング19位にも輝いた『ドルアーガの塔のすべてがわかる本』は、その後、ゲームは攻略本を読みながら遊ぶもの、という習慣を作ったのですが、実はそれほどこの功績については話題には上りませんでした。

その理由のひとつには、この本の登場の2ヵ月後に、徳間書店からかの有名な攻略本『スーパーマリオブラザーズ 完全攻略本』が発売され、こちらが瞬く間に大ベストセラーとなり、1985年に出版された総合ベストセラーランキングのナンバーワンに輝いたことが挙げられます。『ドルアーガの塔のすべてがわかる本』のヒットは不運にも影を潜めてしまったんですね。

この時代の攻略本は、たかがゲームと思われていたものがビッグビジネスになるということを世間に知らしめ、かつ「攻略本」という新たなジャンルを確立させました。

大ヒット攻略本が数多く出版された1985年は、ゲーム史においても大事な年であったということも、今、記しておくべきではないでしょうか。そういった意味で、『ドルアーガの塔のすべてがわかる本』は自分にとって大切な1冊になりました。

今でも本気で遊べる名作は、攻略本いらずに!!

いまだに自分は『ドルアーガの塔』を遊びたくなることがあります。

2017年7月28日、バンダイナムコエンターテインメントから発売されたNintendo Switch向けのダウンロードソフト『ナムコミュージアム』に『ドルアーガの塔』が収録されました。それを聞き、自分は初日に即買いました。

△Nintendo Switchを縦にしてプレイすると、なんとなくアーケード気分
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

また攻略本を片手にプレイできるなぁとワクワクしながらゲームを立ち上げると、なんとこのバージョンには攻略となるヒントがすでに組み込まれていて、ゲームをプレイしている途中に「X」ボタンを押すと、もうその場で謎が解明してしまうという展開でした。なんということでしょう!!

攻略本の時代は、もう次のステップへと進んでいるんだなぁという思いで、そっと攻略本を閉じたのでした……。

もっとも、近頃はゲームについてはWEBで調べちゃいますしね。というわけで、昨今の攻略本は、かつての攻略本とは役目が異なり、気がつけばファンブックのような存在になっていると思う、今日この頃です。

△Switch版は攻略本いらずのヒント付きでした
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 - ゲーム

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